1926年(大正15年・昭和元年)
川端康成の短編小説。
2歳で父、3歳で母を亡くし、16歳までに姉と祖父母とも死別して孤児となった川端康成。
この川端の家庭環境が、本作品にたたずむ虚無感を生み出していると言う人もいる。
一高(現在の東京大学)時代に初めて伊豆へ旅行し、旅芸人の一行と道連れになった経験が、本作に活かされることに。
旧制高校生の孤独に悩む青年は、伊豆へ旅した時に旅芸人の一行と道連れになる。
旅芸人たちと一緒に過ごすうちに、旅芸人に対する偏見が消えていき、好意を持つようになる。
踊子たちが「学生さんはいい人ね」と話しているのを聞いた青年は、自分のことを孤児根性で歪んでいると思っていたので、とてもうれしく感じる。
そして、まだ14歳の純粋な踊子・薫に心ひかれていく青年。
しかし、東京へ帰る日が来て旅芸人たちと別れることに。
帰りの船に上で、純粋な心の踊子や人のいい旅芸人が自分のゆがんだ心をほぐし、素直な気持ちにさせてくれたと感じる青年。
そんな青年の目からは自然と涙が流れてくるのであった。